イスラエル発COVID-19ワクチン有効性のリアルワールドデータ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンが、高レベルの感染防御能を発揮している現状が報告された。ワクチン接種が世界で最も先行しているイスラエル発のデータ。同国保健省のSharon Alroy-Preis氏らの研究によるもので、「The Lancet」に5月5日論文掲載された。同国で使用されている2回接種するタイプのワクチン「BNT162b2」(ファイザー-BioNTech社製)は、1回のみの接種では十分な感染防御能を得られないことも分かった。

この研究の実施期間は、2021年1月24日~4月3日。イスラエルでは4月3日までに16歳以上の人口653万8,911人の72.1%に当たる、471万4,932人がBNT162b2ワクチンの2回接種を完了した。この研究期間中に同国で検出されたウイルスの94.5%は、英国で最初に報告されたB.1.1.7変異株だった。

データ解析の結果、2回目の接種から7日以上経過した場合のワクチンの有効性は、COVID-19発症に対して95.3%、新型コロナウイルスの感染に対して91.5%、COVID-19による入院に対して97.2%、重症化に対して97.5%、COVID-19関連死に対して96.7%であることが分かった。この結果は、イスラエルで実施されている全国的なワクチン接種推進政策がCOVID-19パンデミックに歯止めをかけ、公衆衛生上の大きなメリットであることを示している。

一方で、BNT162b2ワクチンは2回の接種が重要であることも明らかになった。具体的にはワクチン1回接種のみでの有効性は、COVID-19発症に対して62.5%、新型コロナウイルスの感染に対して57.7%、COVID-19による入院に対して75.7%、重症化に対して75.6%、COVID-19関連死に対して77.0%にとどまっていた。

Alroy-Preis氏は、「イスラエルはCOVID-19ワクチン接種率が最も高い国家であり、リアルワールドでのワクチンの有効性に関する幅広いデータを世界に発信できる。現時点で、全国的な規模でのワクチンの有効性を報告し得る国はほかに存在しない」と述べている。また、「克服すべき課題はまだ多く残されているが、ワクチン接種を推進することでCOVID-19パンデミックを終息に導くことができるという希望の持てるデータを得られた」と研究の成果を語っている。

パンデミックを終息させるための残された課題として、ワクチン接種後の感染防御がどのくらい続くのかが明らかでないこと、ワクチン耐性変異株が出現する可能性があること、および、世界的な規模での集団免疫獲得のために、ワクチン接種をさらに推進する必要があることなどが挙げられる。

チャイムシェバ医療センター(イスラエル)のEyal Leshem氏と、英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAnnelies Wilder-Smith氏は、本論文に関する付随論評を執筆している。その中で両氏は「この調査結果は、ワクチン接種率を高めることがパンデミックから抜け出す方法である可能性を示唆している。しかし残念ながら、ほかの多くの国では、イスラエルで実現された高レベルの接種率を再現することはいまだ容易なことでない」と語っている。(HealthDay News 2021年5月6日)

https://consumer.healthday.com/b-5-6-israel-study-...

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